【カロリー制限ダイエットはうつ病発症リスクを上昇させる!?】研究結果が示唆


カロリー制限が精神状態に与える影響は、男性と肥満の人において、より顕著であることがわかった。
新たな研究では、摂取カロリーを制限するダイエットを実践している人は、そうでない人と比べてうつ病の発症リスクが高まる可能性があることが示された。
カロリー制限を行っている人の方が抑うつ症状が高い傾向
カナダのトロント大学の研究者らによる今回の研究では、米国健康栄養調査(NHANES)に参加した28,525人(女性14,329人、男性14,196人)のデータが用いられ、分析が行われた。この調査には抑うつ症状に関するアンケートも含まれており、症状の重症度に基づいてスコアを算出し分析した。結果、ダイエットをしていないと報告した人よりも、カロリー制限を行っている人において、抑うつ症状(気分が落ち込む、エネルギー不足、睡眠障害など)の質問票のスコアが高いことが明らかになった。また、カロリー制限が精神状態に与える影響は、男性と過体重の人においてより顕著であることがわかった。

過去には相反する研究結果も
過去の研究においては、低カロリー食事療法がうつ病の症状を改善すると主張するものもあり、今回の研究結果と相反してしている。しかし、今回の研究の研究者らは、過去の研究は厳格なコントロール下で行われており、参加者が綿密に計画されたバランスの取れた食事を摂取していた点を指摘する。これは現実の日常生活で実際に人々が摂取する食事とは異なっており、理想化された食事に焦点を当て、食事パターンの多様性を考慮していないとし、現実のカロリー制限食は、タンパク質、必須ビタミン、ミネラルの不足を引き起こし、生理的ストレスを誘発し、認知・情動症状を含む抑うつ症状を悪化させる可能性があると述べている。
ダイエットとうつ病の関連性については、明確な結論はいまだ得られていない。今回の研究においても、治療等の介入を行わずデータを分析する観察研究であり、因果関係を明確に示せるものではないことを研究者らは注記している。しかし、今回の研究は、医療従事者が推奨する食事療法が、特に男性と肥満患者におけるうつ病のリスク要因としてどのように考慮される必要があるか、新たな洞察を提供するものだと述べている。

なぜカロリー制限が精神的な健康に影響を及ぼす?
米国登録栄養士エイミー・ローザラー氏は、自身が患者を診てきた経験から、カロリー制限ダイエットを行う人は、栄養摂取に焦点を当てず、カロリー制限に重点を置く傾向があるため、このような結果が生じると話す。そして、「通常、食事習慣に変化を加え、果物や野菜、全粒穀物、健康的な脂肪、低脂肪タンパク質を摂取するようになると、精神状態が改善され、これが持続的な変化につながる傾向があります。」と述べる。神経栄養学者であり、栄養心理学研究者のティモシー・フリー氏は、カロリー制限をする際に、体が気分調整のために必要とする栄養素を含む食品を摂取しなくなることが、うつ病発症リスクを引き上げる要因になる可能性があると述べる。

気分の改善に役立つ食事
米国登録栄養士ミシェル・ルートンシュタイン氏によると、サーモンやサバなどに豊富に含まれるオメガ3脂肪酸はうつ症状の軽減し、認知機能をサポートする可能性が示されている。また、腸内微生物叢の健康状態と気分・感情の健康状態が関連していることが研究により示されており、ヨーグルト、キムチ、ケフィアなどの発酵食品も、精神的な健康状態へのポジティブな影響について現在研究が進んでいる。
ルートシュタイン氏は、長期的な体重管理の成功には、バランスの取れた、持続可能な食習慣の改善に焦点を当てることが不可欠だと述べる。また、個々に合わせた指導と適切なサポートを提供できる登録栄養士に相談することを推奨している。
出典
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