血が混じっている、長く続く、水様性…注意すべき下痢は?医師が教える、下痢からわかるサインと対処法


下痢を引き起こすには何らかの原因があります。下痢症状の悪化をとめる予防策、下痢の時の対処策などと合わせて、医師が解説します。
注意すべき下痢とは?
下痢が長く続く症状で考えられる原因疾患のひとつとして、「過敏性腸症候群」が挙げられます。
腸管に明らかな炎症や潰瘍などの病変がないのに、腹痛や腹部不快感に下痢や便秘を伴う症状が続く病気を過敏性腸症候群と呼んでいます。
血液検査や内視鏡検査でも顕著な異常が見つからず、日々のストレスで腹部症状が悪化することから心身症のひとつとして認識されています。
過敏性腸症候群は、人口の約15%程度に認められるとされています。
そのなかでも特に女性に引き起こされやすい疾患であると認識されていて、年齢を重ねるごとに罹患頻度は減少していくことが判明しています。
腹痛や腹部の不快感、下痢や便秘などをくり返す病気が過敏性腸症候群ですが、これはストレスを受けやすい20〜40歳代に特に多くみられて、過労や睡眠不足、不規則な食生活や不規則な排便などが誘因となることが知られています。
ストレスや緊張によって自律神経が乱れると、腸管にけいれんが起きて排便のリズムが崩れることによって、下痢などの便通症状がもたらされることにも繋がります。
日々の生活のなかで緊張を感じて、不安になることがあると、腸全体の働きが影響を受けて、下痢などの症状が出現することがあります。
日頃から、多大なストレスや過度の緊張などに伴って自律神経のバランスが崩れている人は過敏性腸症候群を発症しやすいと考えられます。
心配であれば、消化器内科など専門医療機関を受診してください。
粘血便や下痢症状が続く際には、大腸がんの可能性も
早期の大腸がんは無症状のことが多く、大腸がんそのものでは腹痛症状や腹部違和感が出現することはありませんが、がんが進行して巨大化すると腫瘍が便の流れを妨害する、あるいは腫瘍から直接的に出血をきたすことで血便症状などが認められることがあります。
大腸がんは早期のタイプではほとんど症状を自覚しないと言われています。
ところが、がん病変部のサイズが大きくなって、腸管の内腔のスペースが狭くなると、便が通過しにくくなり、便秘や間欠的な下痢などの便通異常がみられることがあります。
大腸がんの病状が進行すると、代表的には血便、便が細くなる、残便感、貧血、腹痛、下痢、嘔吐などの消化器関連症状が認められます。
通常、大腸がんの存在する部位によって典型的な症状は異なると認識されています。
- ケース1
例えば、硬い便が通過する下行結腸やS状結腸、直腸に位置する大腸がんでは、便の通りが悪化することによって腹痛や嘔吐症状、あるいは血便や便の狭小化所見も認められやすくなると考えられます。
- ケース2
その一方で、便がまだ水様で硬く固まりきっていない状態が認められる盲腸、上行結腸、横行結腸に形成される大腸がんの場合には、病状が進行してがん組織がサイズアップしても腹部症状が目立たずに、貧血や腹部違和感などの症状によって発見されることもあります。
下痢の時の対処策は?
下痢の対処方法としては、例えば、過敏性腸症候群が原因である場合には、日々のストレスを解消して対策を講じることが最も重要なポイントと考えられます。
過敏性腸症候群は、日常的に溜まった過労や睡眠不足が影響するだけでなく、食事が不規則な生活が長期的に継続されると身体がストレスを感じて、腸管運動が異常に活発化して下痢などの便通異常症状を引き起こすという背景があります。
これらの便通異常の症状に対して、市販薬のビオフェルミンなど整腸剤服用を含めて対症療法を活用して改善させることも一時的な対処法としては悪くありません。
下痢になると体内から水分やミネラル類など必要な栄養素が大量に失われてさらに胃腸が弱りやすくなるため、下痢症状が悪化する負のスパイラルに陥ることも少なくありません。
下痢症状の悪化を早期的に予防するためにも、喪失した水分やミネラル栄養素を補給する必要があり、水分補給する際におすすめなのは経口補水液やスポーツ飲料になります。

特に、経口補水液は人体に必要なミネラル成分や糖分が含まれており、単純な水よりも吸収効率が良好であるため、効率よく水分やミネラル類を補給することができます。
スポーツ飲料水もミネラル栄養素や糖分が豊富に含まれていますが、経口補水液と比較すると、糖分量が多い傾向が認められるため、肥満の場合や糖質制限が必要な方は経口補水液での水分補給を推奨します。
腸は、ストレスの影響を受けやすく極めてデリケートな臓器であり、ストレスによって自律神経のバランスが乱れると、腸管機能にも異常を呈して過敏性腸症候群を発症する可能性もありますので、ストレスを自分なりに上手に解消することが重要な観点となります。
過敏性腸症候群を予防する為にも、休日などは心を解放して、心身ともにリラックスするとともに、普段から十分な睡眠と休養、バランスの優れた食事、適度な運動を実践するなど、規則正しい生活を心がけて腸の調子を安定的に良好に保ちましょう。
下痢をしている際には、温かい白湯などを飲んでお腹を冷やさずに出来るだけ温めるように意識しましょう。
軽度の症状であれば、用法用量を遵守して市販薬を使用して様子観察してもいいですが、下痢症状が長引く、重症化する、あるいは合併して随伴症状が多数認められる際には、市販薬だけに頼らずに専門医療機関を受診しましょう。
早く治したい時、あるいはセルフケアや応急処置をしても症状が収まらない場合は、早急に消化器内科など専門医療機関を受診して相談しましょう。
まとめ
粘血便や水様制下痢などを起こしている場合には、過敏性腸症候群や大腸がん、ストレスに伴う生理反応の可能性があります。
下痢は身近な病気であり、下痢を引き起こす原因としては細菌などに汚染された水や食べ物を摂取する、あるいは日々の生活で過度の緊張やストレスを抱えるなどが挙げられます。
下痢症状に伴って脱水症状が合併すると、体内の水分と電解質のバランスが崩れて人体の機能維持に支障をきたします。
下痢症状が長期間に渡って継続する場合には、重大な疾患を見逃さないためにも、速やかに消化器内科など専門医療機関の医師に相談するように心がけましょう。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
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