〈病気とお金〉もし、50代で1本歯を失った場合、生涯でかかる金額はいくら?歯科医が解説


歯を失うリスクは、年齢に比例して増加していきます。もし今、あなたが歯を失ったらどうしますか? 選べる治療の選択肢や、それにかかる費用、またメリットやデメリットまで。歯科総合医療を行なっている、くろさき歯科の院長、黒崎俊一先生に教えていただきました。
大事なのは、何が原因で歯を失ったのか?
「歯を失う」、その原因として考えられるのは、虫歯や歯周病、ケガなど。また、意外にも日常的な歯の噛み締めも、歯を失う大きな原因になっています。
「歯を失う原因の割合は、虫歯が3割、歯周病が4割、かみしめが2割を占めています。噛み締めは、ギュッと力を入れて噛むことを100%とすると、20~30%の力で力を入れているだけで、歯を失う原因になるんです」(黒崎先生)
黒崎先生曰く、この中で一番怖いのは、歯周病なんだそう。
歯周病は、一気に何本も歯を失うリスクがある!
歯周病が怖いのは、無自覚なところ。悪化しても痛みは特になく、知らないうちに歯茎の下の骨(歯槽骨)が溶けてしまっています。歯槽骨は、歯を支える土台です。ここが溶けてしまうと、歯の根元が徐々にむき出しになり、ぐらつき、抜歯に至ります。
「あまり知られていませんが、歯周病はギネスブックにも掲載されている、世界で最も患者数の多い感染症です。歯周病が進行したら、セルフケアでは治せません」(黒崎先生)
そのため、歯槽骨全体が悪化すると、歯が何本も抜けてしまう恐れが出てきます。もし今、歯磨きをして血が出るなら、それはもう歯周病の重度。今すぐ歯医者にいくことをおすすめします。

歯が抜けたら、選べる治療の選択肢は3つ
選択肢1:ブリッジ
- メリット:見た目も使用感も以前と変わらない
- デメリット:両脇の歯を削る必要がある
- 価格:奥歯1本で15,000円程度、前歯で24,000円程度(保険適用/窓口負担は2〜3割)
選択肢2:部分入れ歯
- メリット:残りの歯を傷つけない
- デメリット:口内に若干の違和感、毎日のお手入れが必要
- 価格:15,000円〜45,000円程度(保険適用)
選択肢3:インプラント
- メリット:見た目も使用感も以前と変わらない
- デメリット:手術と定期検診が必要
- 価格:300,000円〜500,000円程度(保険適用外)
※費用は概算で歯科医院によって異なります。
この選択肢だったら、少し金額は高くなっても「インプラント」がベスト……ではないんです! 50代以降は、これからのライフプランと併せて、治療法を決めなくてはなりません。
治療法には、第4の選択肢もある!
「インプラントにすると、3ヶ月に一度の定期検診が必要になってきます。また、心臓病などに罹患したら、インプラントを入れた時と同程度の費用をかけて、抜かなくてはならない必要性も。この先、転職や定年、家の引っ越し、また老人になった時、自力で歯医者に通い続けることができるのか? など、80歳まで生きるとして、今後起こりうる問題を考えなければなりません」(黒崎先生)
とはいえ、ブリッジのデメリットは受け入れたくないし、部分入れ歯を使うには、高いハードルが……。
「そんな方には、保険適用外の部分入れ歯という選択肢もあります。金額は上がりますが、両端の金具はなく、使用感がかなり改善。装着したまま就寝できたり、修理も可能なので、選択肢のひとつとして加えてほしいと思っています」(黒崎先生)
選択肢4:部分入れ歯(保険適用外)
- メリット:残りの歯を傷つけない
- デメリット:口内の違和感ほぼなし
- 価格:150,000円〜1,000,000円程度(保険適用外)
※コーヌスなど、特殊な入れ歯の場合はさらに価格が上がることもあります。
歯を失い続けたら、800万円もかかる!?
歯周病が原因でどんどん歯を失って、総入れ歯タイプのインプラントにするなら、5,000,000円〜10,000,000円(保険適用外)と費用が莫大に膨らむ場合もあります。
※保険適用外の参考料金
歯のお手入れは、死ぬまで終わることはありません! 今、問題がないからと言って、安心は禁物です。一番恐ろしい歯周病のケアを、半年に1回×30年行なった場合、かかる費用は約180,000円
※歯周病ケア 3,000円/回とした場合
これを安いと感じて、定期的に歯医者に行く習慣をつけるか。高いと感じて、将来自分の歯を失うリスクを増やしていくのかは、あなた次第です。
まとめ:ケアを怠らないことが最も賢い選択
歯に関するトラブルは、親しい人にもなかなか相談しにくいもの。だからこそ、しっかり専門家の意見に耳を傾けましょう。やはり、コツコツと正しいケアを続けることが、一番お金がかからない歯の健康法のようです。
お話を伺ったのは…黒崎俊一先生
医療法人社団アーユス理事長 くろさき歯科院長。昭和62年3月日本大学歯学部卒業。平成4年3月日本大学大学院歯学部補綴専攻卒業・平成8年11月より医療法人社団アーユスくろさき歯科勤務。
<保有資格・所属団体>
日本補綴学会認定専門医/日本歯科審美学会/日本矯正学会/日本大学歯学部兼任講師/さいたま市歯科医師会/さいたま市南浦和小学校学校医
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